ようこそ Japaric Park へ
Rust embedded 界の第一人者である japaric さんの提唱する RTFM 及び cortex-rt などのフレームワークについての自習記録。日本語の記事が少なかったし、私自身は STM32CubeMXとの連携を模索していて方向が違っていたのであまりトレースしていなかった。しかし、@tatsuya6502さんの良記事を見かけ、改めて興味をもってやってみた。
タイトルは滑ってすみません。
- 必要な設定:おもに組み込みの基礎とビルド関係の話題
- ターゲットの設定
build.rs- メモリマップの指定
examples/hello.rs:cortex-mクレートの話、セミホスティングやgdbなどの便利な小ネタ- 逐行解説
- GDBの設定とgdb-dashboard のインストール
- gdbで実行
bin/blinky.rs:デバイスクレートの話- デバイスサポートクレートの追加
- 単体での実行
- 逐行解説
bin/rtfm.rs:RTFMフレームワークの話- セットアップ
- 写経
- 逐行解説
- 感想
必要な設定
github から cortex-m-quickstart を clone してくる方法が示されているが、ポイントとなるのは次の点だ。これを押さえればゼロから書き始めても良い。
ターゲットの設定
.cargo/configにターゲットを設定する。
[build]
target = "thumbv7em-none-eabi"
指定するターゲットはプロセッサによって異なる。
thumbv6m-none-eabi: Cortex-M0, M0+thumbv7m-none-eabi: Cortex-M3thumbv7em-none-eabi: Cortex-M4/M7でFPUが無いものthumbv7em-none-eabifh: Cortex-M4/M7でFPUが有るもの(このクラスだと通常はFPU付きがほとんど)
この記事では ST の Nucleo F103RB をターゲットにする。STM32F103はCortex-M3なのでthumbv7m-none-eabiを設定すれば良い。
build.rs
組み込みの場合、プロセッサに合わせて細かくビルド条件を設定しなければならない。Cargo(Xargo)ではbuild.rsというファイルを使う。Cargoはbuild.rsをホスト上でビルド&実行し、その標準出力に基づいてビルドを行う。cortex-m-quickstartのbuild.rsは次の通り。コメントは筆者追加。
// 以下のファイル操作、パス操作に必要なモジュールを`use`する。
use std::env;
use std::fs::File;
use std::io::Write;
use std::path::PathBuf;
fn main() {
// `OUT_DIR`を環境変数(Cargoがビルド用にせっとする)経由で取得し`out`に保持する。
let out = &PathBuf::from(env::var_os("OUT_DIR").unwrap());
// `./memory.x` を`${OUT_DIR}/memory.x`にコピーする。
File::create(out.join("memory.x"))
.unwrap()
.write_all(include_bytes!("memory.x"))
.unwrap();
// `cargo:rustc-link-serch`に `${OUT_DIR}/memory.x`をセットし、リンカスクリプトとする。
println!("cargo:rustc-link-search={}", out.display());
// (*.rs以外に)これらのファイルが修正されたら再ビルドする。
println!("cargo:rerun-if-changed=build.rs");
println!("cargo:rerun-if-changed=memory.x");
}
cortex-m-quickstartではこのようにしているが、ようはbuild.rsをビルド&実行した時の標準出力にcargo:rustc-link-search=でリンカスクリプトが指定されれば良い。
メモリマップの指定
プロセッサによって搭載メモリ量やアドレスが異なるので、リンカスクリプトにて指示する。cortex-m-quickstartでは、上述のとおり、リンカスクリプトは./memory.xをOUT_DIRにコピーして参照するようになっている。
最低限、次のように、ROMとRAMの開始アドレスとサイズを指示する。
MEMORY
{
FLASH : ORIGIN = 0x08000000, LENGTH = 128K
RAM : ORIGIN = 0x20000000, LENGTH = 20K
}
rustはバックエンドとしてLLVMを使っており、LLVMのリンカは(現時点ではlldではなく)gccのldなので、gccのldの書式で書く。
- より詳しく言えば、
-C linker=arm-none-eabi-ldオプションや-Z linker-flaver=ldオプションでコントロールできる。 - これらのオプションは
.cargo/configのrustflags=[]に書くことでcargoからrustcに渡すことができる。 - 渡されていることの確認は
xargo --verboseオプションで確認できる。
また、実際にコンパイラが使用するセグメント名(例えば.textや.rodataなど)と、memory.xに記載したFLASHなどの領域名の対応や初期化処理はcortex-m-rtクレートで行われるので、exterm crate cortex_m_rt;としてリンクしなければならない。
examples/hello.rs
cortex-m-quikstartにあるexamples/hello.rsをビルドしてみる。
$ xargo build --example hello
--example は src/examples/ディレクトリにあるファイルをbin crate としてビルドするオプション。
エラーが出た。
Undefined reference to `rust_begin_unwind'
example/hello.rsに次を加えて応急処置。
#[no_mangle]
pub fn rust_begin_unwind() {
asm::nop();
}
なぜか、私の環境では--debug時(デフォルト)ではrust_begin_unwind()が無いというエラーになるが、--release時はrust_begin_unwind()を定義するとエラーになる。
逐行解説
元のファイルはこちら。
#![feature(used)]
このクレート内で #[used] feature を使うことを宣言する。
#![no_std]
このクレート内で libstd を使わないことを宣言する。自動的にlibcoreが使われる。
extern crate cortex_m;
extern crate cortex_m_rt;
extern crate cortex_m_semihosting;
外部クレートとしてこれらを使う。参照先はCargo.tomlに記述する。
cortex_m: Cortex-Mへの Low Level API。asm,exception,interrupt,itm,peripheral,registerのサブクレートがある。cortex_m_rt: 上述のとおり。cortex_m_semihosting: 標準入出力をデバッガに表示する。
use core::fmt::Write;
文字列整形モジュールを使用する。
use cortex_m::asm;
use cortex_m_semihosting::hio;
上でインポートしたクレートに短縮名を付けて使う。例えばcortex_m::asmではなくasmと書ける。hioはHost Standard I/O の略。stdinのかわりにhstdinが使える。
fn main() {
let mut stdout = hio::hstdout().unwrap();
writeln!(stdout, "Hello, world!").unwrap();
}
hstdout、つまり、OpenOCDのコンソールに”Hello, world!”と表示する。
// As we are not using interrupts, we just register a dummy catch all handler
#[link_section = ".vector_table.interrupts"]
#[used]
static INTERRUPTS: [extern "C" fn(); 240] = [default_handler; 240];
#[used]は、指定した static 変数が、最適化で消えてしまわないようにする指示。Cのvolatileのようなもの。#[linker_section=...]は、リンカに対する指示。次に配列を割り込みベクタに配置する。サンプルのリンカファイル(memory.x)には.vector_table.interruptsは定義されていないがcortex-m-rtのlink.xでセクションが定義されている(このような相互参照の多さが気にかかっている点ではある)。INTERRUPTというextern "C" fn()型の 240要素のstatic(でimmutable) な配列を定義し、default_handler×240個で初期化する。extern "C" fn default_handler() { asm::bkpt(); }デフォルトハンドラを定義する。中身は、break 命令。
#[no_mangle] pub fn rust_begin_unwind() { asm::nop(); }リンクエラーとなった
rust_begin_unwindのダミーを定義する。
GDBの設定とgdb-dashboard のインストール
- https://github.com/cyrus-and/gdb-dashboard から
.gdbinitをダウンロードして~/.gdbinitにおく。 ~/.gdbinitのsyntax_highlightingで、青色になっている部分が非常に見にくいので、vimとなっている部分を``に修正する。- 末尾付近に
set auto-load safe-path /を追加する。コレによって、./.gdbinitをロードしてくれる。そして、cortex-m-quickstartの./.gdbinitにはtarget remote :3333やmonitor arm semihosting enableなどが書かれている。
gdbで実行
OpenOCDサーバを実行した状態で、gdbを起動する。
$ arm-none-eabi-gdb target/thumbv7m-none-eabi/debug/examples/hello
c(ontinue)で実行した時に、OpenOCDの方に、Hello, world!と表示されればOK。
bin/blinky.rs
デバイスサポートクレートの追加
japaric 氏の流儀ではデバイスクレートを使う。デバイスクレートは、ベンタが公開しているCMSIS-SVDファイルという機械可読のデバイス定義ファイルから、japaric氏が作成したsvd2rustというツールでデバイスクレートを生成する。生成されたデバイスクレートは、当然 japaric 氏が求む機能が実装されている。
svd2rustは$ cargo install svd2rustでインストール出来るし、自力でSVDファイルからデバイスクレートを生成しても良いのだが、今回は生成&調整済みで配布されているのを使う。
Cargo.tomlに次を追加。[dependencies.stm32f103xx] features = ["rt"] version = "0.7.*"src/bin/blinky1.rsに次を写経。 ``` #![no_std] #![feature(asm)]
extern crate cortex_m; extern crate stm32f103xx;
use stm32f103xx::{GPIOA, RCC};
// Nucleo boardでは LED(LD2)はPA5に、ボタン(B1)はPC13に接続されている。
fn main() { cortex_m::interrupt::free( |cs| { let rcc = RCC.borrow(cs); let gpioa = GPIOA.borrow(cs);
rcc.apb2enr.modify(|_, w| w.iopaen().enabled());
gpioa.crl.modify(|_, w| w.cnf5().push());
gpioa.crl.modify(|_, w| w.mode5().output());
loop {
gpioa.bsrr.write(|w| w.bs5().set());
for _ in 1..4000 { unsafe { asm!(""); } }
gpioa.bsrr.write(|w| w.br5().reset());
for _ in 1..4000 { unsafe { asm!(""); } }
}
}
) } ``` * ビルド ``` $ xargo build --bin blinky ``` `src/bin/blinky.rs`をバイナリークレートとしてビルドする。
通常のbin crateはsrc/main.rsを起点にモジュールが読み込まれるが、--bin オプションは src/bin/にあるファイルを起点にbin crateをビルドする。
- 実行
$ xargo run --bin blinky.cargo/configにrunner = 'arm-none-eabi-gdb'が設定されていると、target/thumbv7m-none-eabi/debug/blinky1に生成されたバイナリを gdb にロードするところまでやってくれる(別途OpenOCDサーバが起動している必要がある)。 c(ontinue)で、gdb上で実行される。
単体での実行
- OpenOCDを使って書き込み、単体で動かすにはこうすれば良い。
$ openocd -f board/st_nucleo_f103rb.cfg -c "init" -c "reset init" -c "stm32f1x mass_erase 0" -c "flash write_image target/thumbv7m-none-eabi/debug/blinky1" -c "reset halt" -c "reset run" -c "exit"
逐行解説
extern crate cortex_m;
extern crate stm32f103xx;
use stm32f103xx::{GPIOA, RCC};
今回の範囲ではcortex_mのみで良い。GPIOAとRCCを使う。
ターゲットボードのマニュアルを参照すると、Nucleo boardでは LED(LD2)はPA5に、ボタン(B1)はPC13に接続されていることがわかる。
fn main() {
cortex_m::interrupt::free(
|cs| {
cortex-mクレートのinterruptモジュールの機能で、freeというのがある。CriticalSectionを作り、その中での割り込みを禁止する。各レジスタは、CSごとに借用を行い、専用のアクセス関数(stm32f103xxで定義される)で、安全にアクセスする。
let rcc = RCC.borrow(cs);
let gpioa = GPIOA.borrow(cs);
csに対応した RCCとGPIOAの借用を得る。
rcc.apb2enr.modify(|_, w| w.iopaen().enabled());
gpioa.crl.modify(|_, w| w.cnf5().push());
gpioa.crl.modify(|_, w| w.mode5().output());
RCCのAPB2ENRレジスタを修正して、GPIOAにクロックを供給する。- 修正するときは
modify(r,w)を使う。今回はr(ead)は使わないので_としてある。 APB2ENRレジスタのIOPAENビットをENABLE(1)にする。- どのレジスタのどのビットを操作しなければならないのかは、リファレンスマニュアルを参照する。
- レジスタへのアクセス関数については
stm32f103xxクレートのマニュアル(https://docs.rs/stm32f103xx/0.7.5/stm32f103xx/)を参照する。
GPIOAのCRLレジスタを設定して、PIN_5をプッシュプル・出力に設定する。一々インタフェースの関数名を調べなければならないが、可読性が高い記述ができる。
loop {
gpioa.bsrr.write(|w| w.bs5().set());
for _ in 1..4000 { unsafe { asm!(""); } }
gpioa.bsrr.write(|w| w.br5().reset());
for _ in 1..4000 { unsafe { asm!(""); } }
- BSRRにアクセスしてGPIOのピンを操作する。
- セット側のビットセット(
BS5)のアクセサはset()で、リセット側のビットセットはreset()になっていることに注意(BSRRはBSnのビットをセットすれば対応するI/Oがセットされ、BRnをセットすれば対応するI/Oがリセットされる)。
- セット側のビットセット(
- ビジーループ。
bin/rtfm.rs
RTFMというフレームワークが提案されている。基本的なマイクロコントローラの用途として「入力が入ったら割り込みハンドラで処理をする」というのを想定し、それを宣言的に定義できるようなマクロフレームワークである。
この記事は cortex-m-rtfm 0.2.2を元に書かれているが、セマンティックバージョンに従えば 0.2.*に適用できる。最新の cortex-m-rtfmは、2018-02時点で 0.3.1である。0.2.* と 0.3.* の違いは、こちらの記事に詳しい。
- リソースの遅延割当:
lazy-static的にリソースを遅延割当できるようになった。 - ロックレスI/O:同一のリソースを異なるタスクに割り当てるとき、0.2.では後述のように、Lockを取らなければならないが、0.3.ではOwnershipの取得でコントロールされる。より Rust らしく、ぜひ使ってみたい機能だ。
&'static mutを安全に扱う:init::Resourceに、&'static mutスコープで遅延初期化できる。
書き始めた時期が 0.2.* 時代なので、以下の説明は 0.3.* には対応していないのだが、機会を見つけて対応させたい。賞味期限がまだ残っていそうなうちに公開しなければ。
セットアップ
cargo-edit サブコマンド群がインストールされていれば、次で、Cargo.tomlにcortex-m-rtfmのエントリーが追加される。
$ cargo add cortex-m-rtfm
cargo-editを追加するには次のようにすれば良い。
$ cargo install cargo-edit
写経
コレまでのLチカを、ボタンを押したら点滅周期が変わるようにする。当然、ボタンはRTFMフレームワークで割り込み処理される。
#![no_std]
#![feature(asm)]
#![feature(proc_macro)]
extern crate cortex_m;
extern crate cortex_m_rtfm as rtfm; // 必ずリネームすること
extern crate stm32f103xx;
use cortex_m::asm;
use cortex_m::peripheral::SystClkSource;
use stm32f103xx::Interrupt;
use rtfm::{app, Threshold, Resource};
pub struct Led {
on: bool,
}
impl Led {
pub fn is_on(&self) -> bool {
self.on
}
pub fn blink(&mut self, gpio: &mut ::stm32f103xx::GPIOA) {
self.on = !self.on;
if self.on {
gpio.bsrr.write(|w| w.bs5().set());
} else {
gpio.bsrr.write(|w| w.br5().reset());
}
}
}
app!{
device: stm32f103xx,
resources: {
static LED: Led = Led{on: false};
static COUNT: u32 = 0;
static INTERVAL: u32 = 0;
},
tasks: {
SYS_TICK: {
path: sys_tick,
priority: 2,
resources: [LED, GPIOA, COUNT, INTERVAL],
},
EXTI15_10 : {
path: exti13,
priority: 1,
resources: [GPIOC, EXTI, LED, INTERVAL],
},
},
}
fn init(p: init::Peripherals, r: init::Resources) {
// PA5(LD2)を Output, Pushpullにする
p.RCC.apb2enr.modify(|_, w| w.iopaen().enabled());
p.GPIOA.crl.modify(|_, w| w.mode5().output().cnf5().push());
// PC13(B1)を Input, EXTI13(falling edgh)にする
p.RCC.apb2enr.modify(|_, w| w.iopcen().enabled().afioen().enabled());
p.EXTI.imr.modify(|_, w| w.mr13().set_bit());
p.EXTI.ftsr.modify(|_, w| w.tr13().set_bit());
unsafe {p.AFIO.exticr4.modify(|_, w| w.exti13().bits(0b0000_0010));}
// SysTickを設定し 10ms毎に割り込みがかかるようにする
p.SYST.set_clock_source(SystClkSource::Core);
p.SYST.set_reload(8_000*10);
p.SYST.enable_interrupt();
p.SYST.enable_counter();
**r.INTERVAL = 100; // * 10ms
}
fn idle() -> !{
loop {
rtfm::wfi();
}
}
fn sys_tick(_t: &mut Threshold, r: SYS_TICK::Resources) {
**r.COUNT += 1;
if **r.COUNT >= **r.INTERVAL { // LEDが点灯中は INTERVAL が勝手に変わって欲しくない
**r.COUNT = 0;
r.LED.blink(r.GPIOA); // 反転
} else {
return;
}
}
fn exti13(t: &mut Threshold, mut r: EXTI15_10::Resources) {
rtfm::set_pending(Interrupt::EXTI15_10);
if r.GPIOC.idr.read().idr13().bit_is_clear() {
r.EXTI.pr.modify(|_, w| w.pr13().clear_bit());
loop {
let mut is_break = false;
r.LED.claim_mut(t, |led, _t| {
if !led.is_on() {
is_break = true;
}
});
if is_break { break; }
}
r.INTERVAL.claim_mut(t, |interval, _t| {
if **interval == 100 { // ココでINTERVAL を変更する。
**interval = 20;
} else {
**interval = 100;
}
});
}
}
// --debug 時はコレが必要
// --release 時は不要
#[no_mangle]
pub fn rust_begin_unwind() {
asm::nop();
}
逐行解説
#![no_std]
#![feature(asm)]
#![feature(proc_macro)]
extern crate cortex_m;
extern crate cortex_m_rtfm as rtfm; // 必ずリネームすること
extern crate stm32f103xx;
cortex_m_rtfmはrtfmと名前を変えて取り込む
use cortex_m::asm;
use cortex_m::peripheral::SystClkSource;
use stm32f103xx::Interrupt;
use rtfm::{app, Threshold, Resource};
cortex_masm:nop()などで使うので。SystClkSource:SysTickの設定のため。
stm32f103xxGPIOAなどのペリフェラルはapp!のdevice:で指定することで、自動的に取り込まれる。- しかし、
Interruptは手動で取り込まなければならない。
rtfm- コンパイラの指定に従って。
Peripheralsがなぜ不要かよくわからない。pub struct Led { on: bool, }
- LEDの状態を管理するクラスを作ってみる。
- クラス名はスネークケース。
pubにしておかなれけばならない。impl Led { pub fn is_on(&self) -> bool { self.on } pub fn blink(&mut self, gpio: &mut ::stm32f103xx::GPIOA) { self.on = !self.on; if self.on { gpio.bsrr.write(|w| w.bs5().set()); } else { gpio.bsrr.write(|w| w.br5().reset()); } } }- blink の引数として
GPIOAをとる。app!→割り込みハンドラ経由で借りてこなければならないのて、引数として与えなければならない。- 上手いこと定義時に関連付けられたら良いのだが。
app!{ device: stm32f103xx,device:でデバイスクレートを指定する。resources: { static LED: Led = Led{on: false}; static COUNT: u32 = 0; static INTERVAL: u32 = 0; },
resource:では、ユーザ定義の共有リソースを定義する。- ペリフェラルなどのハードウェアリソースは、フレームワークで定義される。
cargo expandすると、マクロ展開後の状態が見れる。tasks: { SYS_TICK: { path: sys_tick, priority: 2, resources: [LED, GPIOA, COUNT, INTERVAL], }, EXTI15_10 : { path: exti13, priority: 1, resources: [GPIOC, EXTI, LED, INTERVAL], }, }, }
- 割り込みハンドラに対応したタスクを宣言する。
- タスク名は、割り込みハンドラの名前。
path:は、ハンドラの関数名。priority:は、数字が大きいほど優先度が高い。recource:は、ユーザ定義のリソースと、ペリフェラルの両方を指定する。fn init(p: init::Peripherals, r: init::Resources) {
- 初期化関数の名前は
init固定。- このように、ペリフェラルとユーザ定義の2つの引数を取る。
init()は、排他状態で実行される。// PA5(LD2)を Output, Pushpullにする p.RCC.apb2enr.modify(|_, w| w.iopaen().enabled()); p.GPIOA.crl.modify(|_, w| w.mode5().output().cnf5().push());
stm32f103xxクレートの機能を使って、ペリフェラルを初期化する。- GPIOを使うには、まずRCCを操作して、GPIOにクロックを供給する。
- GPIOAは APB2 バスにつながっているので、
APB2ENRレジスタの対応するビット(IOPAEN)をONにする。 - レジスタの一部のビットを修正するので
modifyを使う。 - クロージャのひとつ目の引数は
rだが、今回は使わないのて_としてある。
- GPIOAは APB2 バスにつながっているので、
GPIOAのコントロールレジスタを操作して、LEDがつながっているポート(PA5)を Output Pushpullにする。- コントロールレジスタは、High/Lowに分かれており、Pin5は
CRL(Low側)である。MODE5ビットとCNF5ビットをセットするが、output()、push()という可読性の高いアクセサが定義されている。 - このようにチェイン表記が可能である。
// PC13(B1)を Input, EXTI13(falling edgh)にする p.RCC.apb2enr.modify(|_, w| w.iopcen().enabled().afioen().enabled()); p.EXTI.imr.modify(|_, w| w.mr13().set_bit()); p.EXTI.ftsr.modify(|_, w| w.tr13().set_bit()); unsafe {p.AFIO.exticr4.modify(|_, w| w.exti13().bits(0b0000_0010));}
- コントロールレジスタは、High/Lowに分かれており、Pin5は
- GPIOを使うには、まずRCCを操作して、GPIOにクロックを供給する。
- ボタンの対応するPC13を、割り込み入力に初期化する。
- 端子は外部プルアップされた、アクティブLowなので、Input, floating, Falling Edgeに設定する。
- まずは
GPIOCにクロックを供給(同上、上で同時にやっても良い)。 - 入力、フローティングの設定は
p.GPIOC.crh.modify(|_, w| w.mode13().input());だがデフォルトでこうなので省略可能。 EXTIのIMR(Interrupt Mask Register)のビットをセットして割り込みマスクを解除する。EXTIのFTSR(Falling Trigger Set Register)をセットして、立ち下がりエッジで割り込みがかかるようにする。AFIOのEXTI13ビット(AFIO_EXTICR4にある)のPCxに対応するビット(‘0b0010’)をセットする。ここはアクセサが無いのでbitsでセットしなければならないが、bitはunsafeなのでunsafe{}で囲む。この辺、まだ未整備である。- これらの設定をして、初めて EXTIが正常に動作する。CubeMXでは裏側でやってくれていたが、ここではデータシートを理解して手動設定が必要である。うまくフレームワークで隠してくれると便利なのだが。
- 本来は
p.NVIC.enable(Interrupt::EXTI15_10);のように、NVICを操作して、割り込みを有効化しなければならないが、これはフレームワークがやってくれる(xargo expand ...)。// SysTickを設定し 10ms毎に割り込みがかかるようにする p.SYST.set_clock_source(SystClkSource::Core); p.SYST.set_reload(8_000*10); p.SYST.enable_interrupt(); p.SYST.enable_counter();
cortex_m::SYSTを使ってSysTickを設定する。- SysTickは、チップ固有ペリフェラルではなく、Cortex-Mの機能であることに注意。
SYSTのドキュメントを見るとset_reloadの引数にget_tics_per_10ms()を与えれば良いと思うかもしれないが、STM32F103では、これは9000を返すだけである。設定したクロックツリーを元に正しいカウンタ値を手書きしなければならない。**r.INTERVAL = 100; // * 10ms
- ユーザ定義リソースを初期化するには、
resource:で初期化するのが普通でと思うが、こうしても良い。**r.INTERVALのように**rと2回 De-referenceする。fn idle() -> !{ loop { rtfm::wfi(); } }
idle()は、通常このようにすればWFIでスタンバイ状態に落ちる。fn sys_tick(_t: &mut Threshold, r: SYS_TICK::Resources) { **r.COUNT += 1; if **r.COUNT >= **r.INTERVAL { // LEDが点灯中は INTERVAL が勝手に変わって欲しくない **r.COUNT = 0; r.LED.blink(r.GPIOA); // 反転 } else { return; } }SYS_TICKの割り込みハンドラ。- 10ms周期で呼ばれるたびに
COUNTをインクリメントし、INTERVALを超えていたら、LEDをblink()させる。 ThresholdとResourcesを引数に取るが、Thresholdは、今回は使わない。ResourcesはSYS_TICK::Resoucesとなっており、定義時にresource:に指定したリソースが渡される。- 中身を参照するには、2回 De-referenceする。
INTERVALやLEDはexti13とリソースを共用しているが、こちらのほうがpriority:が高いので、こちらではあまり気にせず使える。- LEDを
blink()させるときに、引数で渡されてきたGPIOAを渡す。fn exti13(t: &mut Threshold, mut r: EXTI15_10::Resources) {
- 10ms周期で呼ばれるたびに
- exti13の方は
Thresholdも使うし、Resourcesはmutである。rtfm::set_pending(Interrupt::EXTI15_10); - 割り込みをペンディングする。コレも定形処理なのでフレームワークで面倒を見てほしいものだ。
if r.GPIOC.idr.read().idr13().bit_is_clear() { - STM32の場合、EXTI15〜EXTI10までが1つの割り込みハンドラに飛んでくるので、GPIOの該当するピンを見て、本当に欲しい入力かを確認しなければならない。
r.EXTI.pr.modify(|_, w| w.pr13().clear_bit()); EXTIの方のペンディングビットをクリアする。loop { let mut is_break = false; r.LED.claim_mut(t, |led, _t| { if !led.is_on() { is_break = true; } }); if is_break { break; } }- LEDが点いていたら待つ処理を、(わざとナイーブに)書いてみた。
- クロージャの中からは直線
break出来ないのて、is_breakというフラグ(boolと推定される)を使う。 r.LEDはSYS_TICKでも使われているのて、優先度が低いこちらでは、claim_mutでローカルクリティカルセクションが許可されている時のみ変更できる。r.INTERVAL.claim_mut(t, |interval, _t| { if **interval == 100 { // ココでINTERVAL を変更する。 **interval = 20; } else { **interval = 100; } });
- クロージャの中からは直線
- こちらも同様。
- LEDはオブジェクトだが、
INTERVALは変数なので2回 De-referenceされている(ここのところよくわからないが、コンパイルエラーのいうがまま)。// --debug 時はコレが必要 // --release 時は不要 #[no_mangle] pub fn rust_begin_unwind() { asm::nop(); }
- LEDはオブジェクトだが、
- コメントのとおりなのだが、謎。
感想
- 初期化、定形処理をリファレンスマニュアル見ながら書くのは(復習にはなるが)めんどくさい。CubeMXの力を感じる。
- cortex-m: きちんと借用を処理していること、SVDから、半自動でデバイスクレートを生成して、しかも可読性に優れていることは大きな魅力である。
- cortex-m: semihosting はデバッグに便利。
- RTFM: リソースの定義やタスクの定義がトップダウンでわかりやすい。
- RTFM: ハンドラの書き方など、まだまだドキュメント不足。引数のリファレンスのほどき方など、サンプルコード頼みだ。コンパイラのエラーメッセージが親切なことに助けられている。
- RTFM: 結局、Non-OSの割り込みイベントハンドラのラッパフレームワークであり、RTOSではない。つまり、複数のアプリケーションタスクを並行して走らせることへの助けは無い。手書きや、拙作の STM32Cube ラッパーと、そう労力は変わらないと感じた。CMSIS-RTOS(及びその一実装であるFreeRTOS)のラッパを待つ、または、作る方が将来性はあるだろう。
- RTFM: 遅延割当などの魅力的な機能があるが、RTFMを使わないとついてこないのが残念だ。全体がマクロによってDSL的に実現されており、フレームワークも漏れなく付いてくる。